全国大会で発表して頂いた発表動画・ポスターのうち、講演者から公開の承諾を頂いた発表のタイトル、発表者、要旨を掲載します。
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1. 調査・研究
「風蓮湖・温根沼における2007年~2021年のオオハクチョウの
個体数変動」
稲葉一将(公益財団法人日本野鳥の会)
風蓮湖は、国内有数のオオハクチョウの渡りの中継地で、かつては、8,000羽~10,000羽が渡来していたが(三浦 1980)、近年は減少傾向にある。根室市春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンターで行なっているオオハクチョウ個体数調査の2007年から2021年の個体数変動から渡来状況を報告する。
調査地は、ラムサール条約湿地の風蓮湖・春国岱と当センターの南東側に位置する温根沼である。調査は、オオハクチョウが風蓮湖・温根沼に出現する秋(10月~11月)に4回、春(3月)に2回実施した。風蓮湖と温根沼の周囲に湖面を見渡せる調査地点を17か所設定し、当センターに勤務する公益財団法人日本野鳥の会の職員がオオハクチョウの個体数を成鳥・幼鳥に分けてカウントをした。
秋の渡来数は、2007年~2011年までは4,000羽~5,000羽ほど記録されていたが、2012年から減少し、近年は1,000羽~2,000羽ほどである。春は、湖面の結氷具合などにより年によって渡来数の差はあるが、若干減少傾向である。
2020年に発行されたモニタリングサイト1000ガンカモ類調査2004-2017年度とりまとめ報告書では、北海道東部でのオオハクチョウの渡来数の減少要因について①北海道北部での渡来数の増加、②採食物の変化、③給餌の減少が仮説として示されている。また、澁谷(2020)では、厚岸湖・別寒辺牛川水系でのオオハクチョウの渡来数の減少要因をデントコーン畑へ餌場がシフトによるものと報告している。当センターでは、夕方に多数のオオハクチョウが別海町方面から風蓮湖へねぐら入りする様子を観察している。また、別海町のデントコーン畑で採食するオオハクチョウの目撃情報がある。これらのことから、風蓮湖に渡来数一部のオオハクチョウは、厚岸湖・別辺牛川水系と同様に餌場のシフトをしている可能性がある。
北海道東部でオオハクチョウの渡来数が減少していることから、他の渡来地との情報共有が必要であると考える。今回の大会では、各地のオオハクチョウの渡来状況などについて議論できれば幸いである。
「富士山周辺のコブハクチョウ標識調査」
葉山久世(コブハクチョウ調査グループ)ソリューション
これまで富士山周辺では、山中湖のみで繁殖していたコブハクチョウが近年、周辺の湖に出現し繁殖する事例が出てきた。これをきっかけに野生化したコブハクチョウの科学的なデータを集め、適正飼育につなげようとカラーリングを用いた標識調査を開始した。2021年6月~11月までに5羽を標識し、継続観察している。6月に標識した個体は河口湖から山中湖や静岡県の海岸に移動したことが分かった。大型でよく目立ち、親しみやすい鳥であることから、広く情報をよせていただくとともに、一般の方にも外来種としてのコブハクチョウに関心を持ってもらうことを期待する。
「野鳥観察データベースeBirdの日本語版『eBird Japan』のご紹介」
岡本裕子・葉山政治(公益財団法人日本野鳥の会)
eBirdとは、コーネル大学鳥類学研究室(Cornell Lab of Ornithology)が運営する、世界的な野鳥観察情報のデータベースであり、市民参加型鳥類調査のプラットフォームとして、繁殖分布調査等の大規模な鳥類モニタリングに利用されている。eBirdには、世界の70万人以上の利用者(eBirder)から、10億件を超える野鳥観察記録が寄せられ、蓄積されたデータは鳥類の分布の変遷などの研究や、保全活動に活用されている。eBirdは複数言語に翻訳されているが、これまでは日本語訳が無かったため、国内の利用者は多くなかった。そこで、日本野鳥の会では、eBirdの持つ機能や様々なサービスを日本語で利用できるように、コーネル大学鳥類学研究室と協働で、サントリーホールディングス株式会社の支援を受け、eBirdの日本語版「eBird Japan」を開発し、2021年11月1日に公開した。eBird Japanを通じて、国内における市民参加型調査の基盤を整えるとともに、若年層(デジタルネイティブ世代)のバードウォッチャーの裾野の拡大にもつなげていきたいと考えている。この発表では、eBirdの概要と、基本的な機能、操作方法を紹介する。
「一色干潟の標識キアシシギについて2020」
高橋伸夫(西三河野鳥の会)
筆者は,西尾市一色町真野(衣崎)海岸(図4,図5)で2013年7月から確認されている標識キアシシギについて,これまでに2回その記録を「西三河野鳥研究年報」に報告した(2015・2016).そこで取り上げた標識キアシシギは,右脚跗蹠に金属リング,左脚腿に黄色フラッグ(黒色で「CCH」の記号)の個体である(以下「CCH」と表記).今回は,この「CCH」のその後の情報と消息について報告する.
また新たに,2017年から「CCH」の採餌・休息範囲とほぼ同じ場所で観察されている標識キアシシギで,右脚腿に緑色フラッグ(黄色で「ANN」の記号),左脚跗蹠に金属リングの個体(以下「ANN」と表記)についても報告する.
2. 保全管理
「奇跡の沼~伊豆沼外来魚駆除の17年~」
藤本泰文・嶋田哲郎(伊豆沼財団)
水の下の世界で起きていることを、私たちはほとんど知りません。90年代半ば、伊豆沼の水面下で外来魚「オオクチバス」は、生態系に深刻な被害を及ぼしました。魚類の個体数は数十分の1に、希少魚であるゼニタナゴは一度絶滅しました。一見、同じような水面が広がっていた伊豆沼ですが、生態系は大きく悪化していたのです。この問題に対して立ち上がったのが、ボランティアで結成されたバス・バスターズ。バスターズを中心に、さまざまな方が関わりながら、少しずつオオクチバスを駆除していきました。活動を始めて11年、周辺水域で生き残ってきたゼニタナゴが沼に戻ってきたのか、2個体のゼニタナゴを沼で再確認。16年目で、沼での産卵を確認し、復活したと判断しました。数百haもある淡水湖沼で、絶滅危惧1A類に指定されているゼニタナゴのような希少種が、一度絶滅した後、復活した事例は、国内では初めてです。関わって頂いた多くの方々に感謝しています。
2021年、ミヤギテレビの協力もあり、沼の中にカメラを入れてみました。市販のアクションカメラを使った撮影でしたが、フナやコイ、たくさんの小魚の群泳など、水面下には驚くような魚たちの舞台が広がっていました。粘り強く撮影した結果、貝のそばを泳ぐゼニタナゴを発見・・・婚姻色を呈したオスや、産卵管を伸ばしたメスを撮影できました。ゼニタナゴは二枚貝に産卵します。きっとこの後、カラスガイなどに産卵したのでしょう。各地で外来魚の影響が今も深刻化する中、どの水辺でも希少魚は姿を消したままです。復活した希少魚が泳ぐ伊豆沼・内沼。水の下で起きている奇跡とも言える今の価値を、いかに伝え、将来世代につなげていくか・・・水中映像の面白さは、その一つの有効なツールになると思っています。
参考資料
・「奇跡の沼~伊豆沼・外来魚駆除の17年~」ミヤギテレビ、2021年9月19日放送
・藤本泰文, 高橋清孝, 進東健太郎, 斉藤憲治, 三塚牧夫, & 嶋田哲郎. 2021. 伊豆沼・内沼におけるオオクチバス駆除活動によるゼニタナゴの復活. 魚類学雑誌, 68, 61-66.
「夢洲-コアジサシの繁殖に向けて-行政との協働」
加賀まゆみ(公益社団法人 大阪自然環境保全協会)
2019年から2025関西万博の予定地「夢洲(ゆめしま)」に生きもの調査に行っている。ここは大阪府生物多様性ホットスポットAランク。
2019年5月、えさを運ぶコアジサシを見かけた。
2020年、コアジサシの集団が繁殖行動をはじめたのは、夢洲の、すでに土砂埋め立てが終わっている3区IR計画地の砂礫地の上。いそぎ保護の要望をだしたが、工事は続行。コアジサシはいなくなった。港湾局に問い合わせても工事は終わっているはず、と言われる。おりからの新型コロナ感染拡大による非常事態宣言下。つながらない電話、担当者不在で、どこに交渉しに行ったらいいかわからない状態が続く。7月、やっと対話ができるようになり、来年は保護しましょう、と言うことになった。
2020年暮れ、次年度のコアジサシ保護区を巡り、面積や土地の高低差などで攻防が続く。
2021年2月、保護エリアの位置・面積・仕様でなんとか折り合ったところで、ちょうど繁殖時期のゴールデンウィークに巨大花火イベント開催の発表。1週間で他の自然保護団体と連絡を取り共同で「―コアジサシの重要な繁殖地である夢洲において予定されている大規模イベントについての緊急声明」を発表。それにもとづき、環境省・港湾局などもイベント事業者を説得。花火イベントは延期となった。
4月、またしても緊急事態宣言下、繁殖誘致の準備をする。が、コアジサシは来ているが3区IR予定地の保護区で繁殖行動をしない。なんとコアジサシは埋め立て工事中の2区万博予定地のほうで、繁殖活動をしていた。保護区設定の検討を一緒にしてきた担当者たちは春の人事異動で全員が異動。新任相手にまた2区のほうの工事差し止めの直談判。しかし申し送りは完璧になされていて、港湾局・建設会社は総出で調査し、私たちが要望したエリアの半分の面積、工事を中止しコアジサシ保護区にしてくれた。面積は3区保護区より広い。
そして7月11日、夢洲の湿地に3000羽を超すコアジサシが。渡りの前の大集合か? 今年も大阪湾のコアジサシ、いのちをつなぐことができた、と感動。その後「来年も工事中の適切な場所をコアジサシ繁殖に提供したい」という港湾局の談話が新聞に掲載されていた。
夢洲は2025年万博開催のために、今急ピッチで工事が進んでいる。しかし、このゴミ埋め立ての人工島夢洲に創出した多様な生きものが集う塩性湿地やヨシ原は貴重なもので、万博中も万博後もぜひ残しておきたいものである。自然を保全していくために、行政との協働はいい形で存続させたいと思っている。
「大規模風力発電事業計画における市民科学の取り組み
~浜厚真BioBlitz2021~」
牛山克巳(宮島沼水鳥・湿地センター)
北海道・苫小牧市と厚真町にまたがる勇払原野東部において,Daigasガスアンドパワーソリューション株式会社による (仮称)苫東厚真風力発電事業が計画されています.
計画地には広大な自然海岸が広がり,砂浜,草原,湿原,池沼,河川,疎林など多様な環境が,たくさんの生きものたちの生息地となっています.こうした自然豊かな海岸線は周辺ではすでに多くが失われており,計画地は希少な生きものたちの最後の生息地として非常に重要な場所となっています.また,渡りを行う生物にとっては,計画地は北海道と本州をつなぐ移動ルートにあたり,多くの渡り鳥などが集結する場所になっています.大規模な風力発電の建設と稼働は,多くの生きものに直接的,間接的に深刻な影響をもたらすと懸念されています.
そこで,この唯一性が高く,希少な環境が失われる前に,計画地の生物相をきちんと記録し,必要な保全策を検討するため,市民科学による生物相一斉調査~浜厚真BioBlitz 2021~が行われました.
「ハマシギ亜種の渡り_2-普通種を普通のままに」
柏木実(ラムサール・ネットワーク日本)
ハマシギは北半球では最も分布の広い小型シギ・チドリ類で、北極圏で繁殖して、全北半球で普通に見られる種です。日本では春の渡りシーズンにシギ・チドリ類の4割を越え、越冬期に3分の2を越える優占種です。東アジアの他の地域でもハマシギはたすう沿岸域の干潟だけでなく、河川敷など内陸湿地を含め、普通に見られていた種です。しかし、他のシギ・チドリ類同様近年著しく減少しています。普通種であるハマシギを守ることは絶滅危惧種を含むシギ・チドリ類全体の生息地を守ることであり、それは人間の生活の場所を守ることでもあります。
特に越冬期に識別の難しい種ですが、ハマシギの渡り時期、特に8-9月に亘ってくる個体とそのフラッグに関する情報が積み重なることで、カムチャツカ、サハリンで繁殖する亜種についての知見が増えます。それは他の生息地との繋がりを解明することにも繋がり、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ全体のハマシギを守る一助となることについて話します。
それと共に、1990年代後半から日米政府が行ってきたハマシギ保全のプロジェクトや、近年日本政府が研究者・市民・NGOとともに進めている取組みを紹介し,ハマシギという普通種が普通のままでいる事の大切さについて考えます。
3. 普及啓発
「夢洲~つなぐいのち~ 埋立地に創生された自然とセイタカシギの
繁殖報告」
磯上慶子
(公益社団法人 大阪自然環境保全協会 夢洲生きもの調査グループ)
大阪湾に、海を埋め立てて造成された人工島、夢洲。万博の開催予定地である夢洲は、メディアでは常に「負の遺産」「なにもない」と発信される。しかし、その実、夢洲は大阪市内にたった二ヶ所しかない「大阪府レッドリスト2014生物多様性ホットスポットAランク」であり、埋め立てにより大阪湾沿岸部から失われてきたものが、現在、自然の力で創生されて、多くのいのちを未来へつないでいるかけがえのない場所となっている。
大阪市には自然がないといわれる。だが見渡せば豊かな自然が大阪市内にもたくさん存在している。ただ、あることに気づかず、足元の身近な自然を見ようとしないうちに、それらは本当に失われる。その繰り返しがずっと行われてきた。もうそろそろ立ち止まり、身近に目を向けてみよう。本当に大切なものが、取り戻せなくなる前に。
「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの
概要」
市川智子(環境省自然環境局野生生物課)
東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの概要を紹介するスライドショーです。
参考ホームページ:https://www.eaaflyway.net/
「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの
戦略計画2019-2028」
市川智子(環境省自然環境局野生生物課)
東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)の、2019年から2028年の10年間の戦略的な方向性を示す「戦略計画2019-2028」の概要を説明します。
参考ホームページ:https://www.eaaflyway.net/wp-content/uploads/2020/04/JAP-MOP10_D01_Strategic-Plan-2019-2028_Final-1-1.pdf
「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの
国内パートナーシップ」
市川智子(環境省自然環境局野生生物課)
東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)は渡り性水鳥を保全するための国際協力の枠組を提供するものですが、このパートナーシップの実施には、参加国の国内におけるパートナーシップの構築が重要とされています。日本における国内パートナーシップについてご紹介します。
「世界渡り鳥の日」
藤江陽平(環境省自然環境局野生生物課)
渡り鳥とその生息地の保全の必要性を訴える「世界渡り鳥の日」について、ご紹介します。
参考ホームページ:https://www.worldmigratorybirdday.org/
「日本のネットワーク参加地の印象 - from the eyes of a foreign photographer」
Eugene Cheah
私が訪れた日本のネットワーク参加地の様子を写した写真を集めたスライドショーです。私の出身地であるボルネオ島にはネットワーク参加地は一つしか無く、日本の参加地は多様で印象的です。
写真をとおして、水鳥や湿地を知らない人たちにも興味や親しみを持ってもらえるような物語を語れないかと模索しています。今回は、行ってみようかな、と思っていただけるような写真が撮れていたら嬉しいです。
4. サイト紹介
「クッチャロ湖と水鳥観察館の業務について」
千田幹太(浜頓別クッチャロ湖水鳥観察館)
クッチャロ湖は北海道枝幸郡浜頓別町にある日本最北のラムサール条約登録湿地です。大小の異なる2つの沼が細い水路で繋がっており、ひょうたんのような形をしています。クッチャロ湖といえばコハクチョウです。ピーク時には毎年6,000羽を超え、湖を賑やかにしてくれます。しかし、浜頓別町にはクッチャロ湖の他にも豊かな自然環境、多くの生き物が存在しています。そこで、本発表ではクッチャロ湖をはじめとした浜頓別町の環境や水鳥観察館の取り組みについてご紹介いたします。
「サロベツ最大のガンカモ中継地ペンケ沼の保全活動」
長谷部真(NPO法人サロベツ・エコ・ネットワーク)
北海道北部にあるサロベツ湿原は国立公園とラムサール条約登録湿地に指定されています。2021年10月25日に東アジア太平洋フライウェイパートナーシップ(ガンカモ類)に豊富町が参加しサロベツ湿原(2253ha)が登録されました。登録された地域はラムサール条約登録湿地の北半分です。今回入らなかった幌延町の南半分については登録に向けて今後活動を続けて行きます。
サロベツ湿原周辺には大きく分けて4つ(大沼:稚内市、兜沼:豊富町、ペンケ沼:豊富町・幌延町、振老沼:天塩町)のガンカモ類の主要な渡りの中継地があります。春と秋にはマガン、オオヒシクイ、ヒシクイ、コハクチョウ、オオハクチョウを中心としたガン・ハクチョウ類が利用し、近年はカリガネ、ハクガン、シジュウカラガンなどが確認されるようになりました。これらの中でもペンケ沼が最大の中継地で多いときでオオヒシクイが5,000羽・マガンが40,000羽訪れます。
もともとペンケ沼に流入する大きな河川はありませんでしたが、下エベコロベツ川と福永川が人工的に接続され沼に土砂が堆積するようになった結果、沼の面積が1926年の2.5km2から2021年の1.1km2に減少し現在も減少し続けています。このままでは将来ペンケ沼は土砂により埋没し、道北地方の主要なガンカモ類の中継地が失われる恐れがあります。
私たちはバードライフインターナショナル(PCPD)から支援を受け、ペンケ沼の保全に向けてガンカモ調査、湖面面積調査、水深調査、流入河川を含むゴミ拾いと調査を実施しています。ペンケ沼の現状については過去に上サロベツ自然再生協議会の議題に挙げられたこともありますが、これまでのところ具体的な対策が検討されていません。豊富町は過去の河川の氾濫を克服し、開拓による湿原の牧草地化によって発展してきた酪農の町なので難しい面が多々ありますが、河川切替された下エベコロベツ川をサロベツ川に接続し元の河道に戻すことがガンカモ類の中継地であるペンケ沼の消失を回避するための唯一の根本的な解決方法になります。
「米子水鳥公園 人と自然のサンクチュアリ」
神谷要(米子水鳥公園)
米子水鳥公園は、ラムサール登録湿地の「中海」の東部にある水鳥の保護区であり、ここでは様々な環境教育が行われている。
米子水鳥公園は、もともと中海干拓淡水化事業で埋められていた彦名工区の一部を埋めずに残した場所で、広さは28.8haありそのほとんどが「つばさ池」として水鳥の保護区となっている。「つばさ池」の北側には、ネイチャーセンターが建っており、この周辺だけ観察者が立ち入ることがでる。米子水鳥公園では、このネイチャーセンターを中心にCEPA活動を進めておりその様子について解説する。
ネイチャーセンターは、木造の2階建ての建物であり、観察ホール、展示室、視聴覚室、ミュージアムショップなどが設置されている。観察ホールでは、レンジャーより野鳥の解説を受けることができるほか、野鳥パズルや等身大巣箱、野鳥変身セットなど来館者が楽しめる展示物を職員とボランティアが手づくりで作り上げている。また、ムシムシボックス(標本箱)やデジタル顕微鏡、クイズラリーなど来館者が水から体を動かして楽しむことかできるよう工夫をしている。
また、米子水鳥公園では人間が立ち入ることができる限られた場所で、できるだけ様々な自然体験が来館者にできるよう工夫をしている。例えば、芝生広場は当初は設計に刈ったものであるが職員がシバを植え、草を刈って作った場所で、子供たちのお弁当の場となっている。また、ジュニアレンジャーの森は、幅5メートルしかない連続した植栽であった場所に中に小道を作ることで観察路として活用できるようにしている。この場所では、夏には昆虫採集が楽しめるほか、秋にはどんぐり拾いの場所として地元の小学校や幼稚園に親しまれている。さらに、園路沿いのヨシ原にボランティアと協力してメダカ池を掘り、メダカや様々な水性昆虫がすむ場所としている。休みの日には、ネイチャーセンターでタモを借りた子供たちが、自然観察を楽しむ場所となっている。
米子水鳥公園ではこのように、来園者が体を動かし、時にボランティアとして参画しながらCEPAの活動を行っている。